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改めてキャリアを考える 第一回 キャリア成長論

キャリア、という言葉が日本で広まり始めたのは2000年代に入ってからと考えられている。私が教員になったのは2001年のことなのだが、前任者から引き継いだ科目の名称は「職業指導論」。教職課程の1科目で、主に高校生の就職活動を指導するための科目であった。

スリーステージからマルチモデルへ。変わりゆくキャリア概念

当時はまだ年功序列終身雇用が当たり前。一度会社に就職したら何か大きな問題がない限り定年までその会社に勤め、定年後は悠々自適で働かずに余生を送るというのが一般的だった。そのような時代においては、まさに「キャリア形成イコール就職」であり、自らのキャリアを考えるのは就職先選びの、人生で一度きり、という人が多かった。

学校→就職→定年余生という人生モデルをスリーステージモデルというが、この図式が徐々に変わり、現在では社会に出てもまた大学や大学院に帰る、会社員から一念発起して起業し、その会社を売却してNPO法人を作るなど、一つの人生の中に色々なステージがあるマルチステージモデルになりつつある。

スリーステージモデルでは、一度就職したら会社にキャリア形成を任せて仕舞えたが、今はそういう時代ではない。「自分のキャリアは自分で作る」必要がある。

このように言うと負担に感じるかもしれないが、キャリア形成を自分の手に取り戻す、と考えることもできよう。自分のキャリアのオーナーになると考えてみたらいかがだろうか。

そもそもキャリアとは?過去から未来へ定義を読み解く

さて、ここまでキャリアという言葉を定義もせずに使ってきたが、そもそもキャリアとはどのような意味を持つ言葉なのだろうか。

私は、1989年にアーサー、ホール、ローレンスによって定義された「個人が長年にわたって積み重ねた働く経験の連鎖」がキャリアの定義として一番わかりやすいと思う。もともとキャリアとは馬車の轍(わだち)のことを指す言葉で、歩んできた道という意味である。この意味から、キャリアが「今までの職務経験」の意味合いが強いことは事実だ。

あなたのキャリアは?と問われたら大体の人が今までの仕事や学びの経験を語るだろう。しかし、過去ばかり見ていても意味はない。むしろこれから歩む道について考えたいわけで、これからを考えるためのキャリアの定義が必要だ。そこで、私は未来志向的なキャリアの定義を行ってみた。「働くことを通じて志を実現する成長のプロセス」いかがだろうか?

ここでいう「働くこと」は、経済的な糧を得る仕事だけを指すものではない。働く、という字は人が動く、と書く。まさに、人が動いて傍(はた)を楽にすること全てを含む。もちろん仕事も傍を楽にするからお金をもらえるわけで、「働く」に含まれる。

しかし、お金につながらない家事労働やボランティアも立派な働きである。Work Life Balance(ワークライフバランス)ということが言われるが、私はLife-Work-Social integration(ライフワークソーシャルインテグレーション)が、働くということの本質だと考えている。この、働くということを通じて自らの志、想い、Willを実現することこそ、キャリアを積むことなのだと思う。

Life-Work-Social integration、その学びと成長を支えるもの

しかし、そのためには学び続け、能力を向上させ続けることがどうしても必要になる。多くの場合、自らが「やりたいこと」は自分の能力を少し超えたところにある。それゆえ、学びと成長がないと志が果たせないのだ。

では、その学びと成長の意欲を保つために何が必要だろうか。それは、なんといっても自分の可能性を信じる力である。学べば叶う、という確信がなければ意欲はすぐに失せてしまう。皆さんも、大学受験の際、学び続けられたのは「頑張れば合格できる!」と信じていたからではないだろうか。

どんなに頑張っても絶対に無理、と感じたら努力を続けることは不可能だ。自分の可能性を信じ続けることができたからこそ、学び続けることができ、結果として合格できたのだ。

ただ、たった一人で可能性を信じ続けられたのかどうかは振り返ってもらいたい。家族や周囲の期待が後押しをしてくれたのではないだろうか。みんなから、「どうせ無理だよ」と言われる中、自らの信念を固く持ち続けることはとても困難だと思う。周囲が期待してくれて初めて可能性を信じる気持ちは維持できる。

この意味から、キャリア形成において周囲から期待されることは大変重要な意味を持つ。私のキャリア成長論の根幹を成しているのが、この周囲からの期待の存在だ。

キャリア自立と周囲の期待の関係性とは?

ただここで、一つ困ったことが起きた。私は長年にわたってキャリア自立なるものを主張してきたのだが、周囲から期待されないとちゃんとキャリア形成できない、ということでは他律的要素がキャリア自立のど真ん中に来てしまう。

「困った時には現場に帰れ。」これは前職の野村総合研究所時代に先輩から教わった言葉だ。悩んだ挙句、私は手当たり次第に周囲の人間のキャリア・インタビューを行った。

数多くの方のキャリアを聞くにつれ、私の目から見ても、社会的にも、そして本人的にも、キャリア形成に成功している、少なくともそう認識している方々に共通しているのが、「たまたま運よくチャンスが転がってきた」という表現だった。

有体に言えば、運が良かった、ということなのだが、さらに突っ込んでその前後の経緯を聞いてみると、決して単なる偶然などではなく、「偶然が起こるべく周囲の期待を高める」という言動をしていることがわかってきた。

偶然を引き寄せた、あるゼミ生の言動

私のゼミ生の話しが典型的だ。彼はある大手の食品メーカーの商品開発を行うエンジニアだ。それまでも製品技術の開発で成果は上げてきたのだが、それだけでは会社のビジョン達成には不十分だと感じるようになった。単なる技術開発ではなく、商品、さらには事業を開発してより多くの消費者に届けることが大切だと考えた。

しかし、今の自分は技術のことはわかっても事業の作り方は知らないし、人を巻き込むリーダーシップにも欠けている。これでは自分の志を果たすことはできない。入試面接のとき、「事業の起こし方やチームビルディング、イノベーションプロセスそのものを勉強したいと思い、この研究科を受験しました。」と彼は語った。

合格して私のゼミで勉強し始めると、彼はオープンな性格で、大学院で学んでいることを会社の周囲の人間にあれこれ話し始めた。これが上司の耳にも入ると「その志良し」とばかりに新たなイノベーションに取り組むチームを任されたのだ。

経緯を知らない者には偶然チャンスに恵まれたようにみるかもしれない。しかし実はその抜擢の裏には、自らの次のステップを見定め、その実現のために自主的に学び始めた本人の努力があったのだ。

計画された偶発性と周囲の期待

有名なキャリア論に「計画的な偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」がある。スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが提唱した理論だ。多くの人は偶然によってキャリアが形成されているが、その多くは単なる偶然ではなく日々の行動や考え方で好ましい偶然が起こる確率が高まる、というものだ。

まさに、好ましい偶然を高める要素の一つが周囲の期待を集める積極的行動ということなのである。ただし、無闇矢鱈に期待を高めようと自らの志や夢を吹聴しても効果はない。今の自分がいる状況を冷静に観察し、周囲が何を期待しそうなのかを見定めなくてはならない。次回は、具体的な周囲からの期待の集め方を語ろうと思う。

MBS明治大学ビジネススクールイベント情報

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<開 催 日>
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<開 催 方 法>
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<申し込み締め切り>
事前参加登録(当日午前10:00まで受付)を行います

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