ちょっとした異変見逃さない~社会を守り支えるAI

AIでキャンパスをやさしく見守る ─ 安全と学びが共存する環境づくり
大学という場所は、学び、出会い、挑戦が交差する、かけがえのない空間です。そんな大切な場所だからこそ、「安心して過ごせる環境」が必要だと、私は強く感じています。現在、私は株式会社アジラの代表取締役CEOとして、行動認識AIという技術を通じて、大学キャンパスをはじめとした様々な空間の安全性を高める取り組みを進めています。
「やりたいことに思いきり取り組める環境を、テクノロジーで支えたい」
その想いが、今の私の原動力です。
アジラとの出会い。金融からAIへ、社会貢献を想いキャリア歩む
私は2000年3月に明治大学法学部法律学科を卒業しました。在学中は法律を学びながら、「なぜこうなるのか?」「この仕組みは誰のためのものか?」と、自分なりに考えることの大切さを学びました。この『問いを立てる力』は、社会に出てからもずっと私の土台になっています。正解のない問題に向き合いながら、新しい価値をつくり出す ― 今の仕事にも、学生時代の経験が活きています。
大学卒業後は、日興証券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)に入社し、18年間にわたり金融の現場で経験を積みました。その後、いくつかの企業で新しいチャレンジを重ね、2022年にアジラに参画しました。2023年には取締役COOに、そして現在は代表取締役CEOとして経営を担っています。
こうして、これまで業種も立場も異なるさまざまな環境に身を置いてきましたが、私の中で一貫していたのは「社会の役に立ちたい」という想いです。アジラとの出会いは、その想いを技術の力で形にできると感じた、特別な転機でした。
昨今、ChatGPTをはじめとする生成AIの登場により、テクノロジーの力があらゆる業界の在り方を変え始めています。私たちが暮らす社会も、「人の仕事を代替するAI」から「人と共に考え行動するAI」へと進化の真っ只中にあります。アジラが取り組む『行動認識AI』も、まさにそのような時代の中で、人に寄り添い支える技術として磨かれてきました。
トップクラスの技術が見逃しを防ぐ
株式会社アジラは2015年に生まれたスタートアップ企業です。「行動認識AI」という技術を使って、人の動きや振る舞いを映像から分析し、安全や安心に役立てる取り組みを行っています。この『行動認識AI』の技術ですが、アジラは他企業に先駆けて注目し、開発してきた経緯があり、世界でもトップクラスの精度、検知スピード、そして処理速度を誇っています。
主力プロダクトである「AI Security asilla」は、防犯カメラの映像をもとに不審な動きや異常行動をAIが検知し、必要なタイミングで通知を行うシステムです。人手では難しい『見逃し』を防ぎ、トラブルの早期発見・防止につなげます。
人手不足の現場を支えるテクノロジー、導入先の拡がり
私たちは独自に開発した姿勢推定技術「Asilla Pose」によって、映像内の人の動きを細かく正確に読み取ることができます。この活用状況をご紹介していきたいと思います。
実際の運用では、警備・商業施設・鉄道・空港など国内100施設以上にシステム導入され、さまざまな空間で活躍しています。大がかりな設備更新を必要とせず、今あるカメラに追加する形でAIを導入できるのも、現場から評価されているポイントです。
導入が広がる背景として、近年、警備業界をはじめとする多くの現場で、深刻な人手不足が続き、高齢化や労働人口の減少により、特に夜間や広域施設での常時監視や対応を担う人材の確保が課題となっています。
アジラの行動認識AIは、そうした現場において強力なパートナーとなります。24時間365日リアルタイムで、人の動きや異常を検知することができ、限られた人数でも広い範囲の安全をカバーできるからです。警備員や管理スタッフが本当に必要な判断や対応に集中できる環境をつくる行動認識AIは、人材不足に悩む現場をテクノロジーの力で支える仕組みとして注目されています。
そして、私たちはこの技術を、警備や商業施設だけでなく、教育現場にも活かせると考え、大学キャンパスへの導入も進めていきたいと考えています。
ちょっとした異変を安全で持続可能なキャンパスづくりに貢献
大学では、多くの学生が日々の学びや活動に励んでいます。一方で、キャンパスの広さや多様な施設、時間帯による人の動きの変化などから、思わぬトラブルやリスクも潜んでいます。塀がなく、地元の方々の交流も盛んで誰でも自由に往来できるキャンパスも少なくありません。また時間帯やシーズンによって人の動きも変化します。
こうした状況の中で、アジラのAI技術が果たす役割はますます重要になっています。さらに、学生同士のトラブルや事故を未然に防ぐ『予防的な見守り』としても活用され始めています。AIの導入が進むことで、大学全体の危機管理レベルが底上げされることを実感しています。
特にアジラのAIは、そんな日常の中で起こりうる『ちょっとした異変』を見逃さず、以下のようなシーンで役立ちます。
■深夜や早朝の構内での不審行動や侵入の検知
■学生の転倒や体調の急変といった異常行動の早期把握
■混雑状況の可視化による安心・安全な動線設計
■イベント時などの群衆の動きのモニタリングと対応支援
すでに全国10校以上の大学で導入され、日々の学生生活を支える仕組みとして稼働しています。今後も各大学との連携を通じて、学生はもちろん広く多くの人が過ごす、より安全で持続可能なキャンパスづくりに貢献していくことを目指しています。
技術と倫理の共存。人間の尊厳や多様性を尊重できるAIへ
今後さらに進化するAI技術には課題もあります。それは、社会に新たな価値をもたらすと同時に、倫理やプライバシーといった課題にも向き合う必要があるということです。当社の仕組みは既に、個人情報を取得しない形で運用ができていますが、私たちはさらに、技術をただ便利なものとしてではなく「人間の尊厳や多様性を尊重するパートナー」として育てていきたいと考えています。テクノロジーと人の共存が当たり前になる未来に向け、アジラはこれからも誠実に挑み続けます。
後輩の皆さん、問いを持ち続け、自分の道を拓こう
進路や将来の選択に悩むこともあると思います。私自身も、金融からスタートし、いくつもの業界を経て、今こうしてAIのスタートアップの経営に関わっています。その中で感じているのは、「問いを持ち続けることの大切さ」です。
何に関心を持つのか?
何に違和感を持つのか、変えたいと思うのか?
その“自分の感覚”を大切にしてみてください。
どんなキャリアであっても、自分の信じる問いを軸にしていれば、道は自然とつながっていきます。そしていつか、みなさんと何かの形でご一緒できたら嬉しく思います。
2000年3月
明治大学法学部法律学科 卒業
尾上 剛
株式会社アジラ 公式サイト
https://www.asilla.jp